探検という場で使用してきた道具についての様々なエピソードと審美眼。
ロビンソン・クルーソーのモデルとなった実在の水夫アレクサンダー・セルカークの住居跡を発見したことでも知られる、探検家/作家の高橋大輔による道具についてのエッセイ集です。非常に美しい文字組/レイアウトで、内容をよく表したストイックな装丁は寄藤文平によるものです。どこから読み進めてもいいページレイアウトになっています。
エッセイの内容は、ただの道具紹介というものではなく、自身が探検という場でサバイバルを行い極限の状態で使用してきた道具についての様々なエピソードを中心に語られています。いわば生死を分けるような局面でいつもそばにいた道具=相棒についての話なので、とても説得力がありますし、冒険小説を読んでいるようなドキドキ感があります。
また、どうしてこの道具を選んで使っているのかということも語られているので、ものを見る審美眼というものをじっくり考えさせられます。紹介されている道具はいわゆるヘビーデューティーなアイテムが多いのかなと思いきや、「壊れた羅針盤」や「1ファージング銅貨」など著者の思い入れのあるモノたちも紹介されています。
特に「梅林の箸袋」の話は、実際のサバイバルの現場では、質実剛健なものだけではなく、一見無駄なようなものでも心の支えになるものがサバイバルの現場では必要だということがよくわかるエピソードです。優れた道具にはそれ自体にストーリがあるのはもちろんですが、使い手によって新たなストーリーが書き加えられていくことがよくわかります。そしてそういった道具たちには何にも変えられない魅力があります。
実際の生活ではサバイバルの経験はそうそうないと思いますが、普段の生活にも通じるものが数多くあると気づかされます。そういった自分自身にとっての「命を救ってくれる道具」を見つけたいと思わせてくれるエッセイ集です。
著者について / 高橋大輔
明治大学政治経済学部在学中から世界六大陸を放浪。「物語を旅する」をテーマに世界各地の神話や伝説を検証し、文献と現場への旅を重ねている。 2005年、米国のナショナルジオグラフィック協会から支援を受けたロビンソン・クルーソー島国際探検隊でエクスペディション・リーダー(探検隊長)を務め、ロビンソン・クルーソーのモデルであったアレクサンダー・セルカークの住居跡を発見した。
引用:ウィキペディアより